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好きなルアー3つの一つめ/六度九分

私が初めてルアーで魚を釣ったのは1994年の9月27日でした。
何故これだけ正確な日付を覚えているかというと、今も自宅の壁に魚拓が貼ってあるからです。

小学四年生の私はその夜も父と一緒に、歩いて10分も掛からない旭川に出かけました。
遠く対岸、土手沿いを走る道路脇のあかりがぽつぽつ見える。
ときどき通る車のヘッドライトが右に左に行き交う。
左手に架かる大きな橋にもたくさんのあかりが灯る。
そういう光が無数に反射して、小さな三角のさざ波がパパパパと煌めくのを覚えています。

この時期の旭川では手長エビがとれます。
満潮になると足元の護岸まで水が来て、その垂直の壁に手長エビが姿を現す。
ライトで護岸を照らすと、体のわりに随分と小さな目をオレンジに光らせてゴソゴソ動く手長エビが見つかる。
直径15センチの小さなタモ網二つを、頭の側とお尻の側に構えてじわじわと挟み撃ちにすると大概はうまく捕れました。

父が釣りをしている日も、私はエビを捕まえることに夢中でした。
だからその夜も、いつ釣れるともしれない、というか釣った事がないので何のイメージも湧かないルアーを投げながら「エビとりの方がいいなぁ」とぼやぼや考えていました。

私の釣り史は、多くの釣り師がそうであるように父に連れられて始まります。
その夜出かけた場所ではハゼやセイゴを釣った事があったし、それ以外にもメバルやフグ、アブラメなんかも釣った事がありました。
しかしこの夜釣った魚は、そのどれとも違っていました。

ルアーを巻いていると、プルプルと小さい抵抗がかすかに感じられる。
それだけが心細い暗い夜を繋ぐ。

突然。

グン、と来た。

グングングン。

私の記憶はそこで途切れています。
その魚を釣りあげて歓声を上げたとか、ぶるぶる震えが止まらなかったとか、懸命に魚を掴んだとか何ひとつ覚えていません。

唯一忘れられないのは、
少し経って父が
「光くんは釣れても何も言わんな」
と言った事です。

あれは言わないんじゃなくて言えなかったんだと、今なら分かります。
声も出ないような出会いでした。

その37センチのシーバスを引き合わせてくれたラパラのCD3の金黒は、忘れようにも忘れられないルアーになりました。
今も工房に掛けてあります。

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